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最高裁判所第二小法廷 昭和25年(オ)76号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告理由第一点について。

被上告人は、今次終戦の直後頃迄、鎌倉市大町二三五六番地に家族と共に住所を置き、現役海軍法務科士官として海軍省に通勤していたのであるが、軍隊の解体により早晩軍籍を離れるところから、本籍地の城内村を生活の本拠としようとの方針を定めそこに住所を定める意思を以つて、終戦後の昭和二〇年八月下旬頃、右鎌倉市の住所を引き上げて家族を右城内村に帰郷させると共に、家財道具を同所に輸送し、自らは勤務の関係上帰郷できずに単身勤務地に留まり、一時的居住の場所として東京都新宿区新小川町四三番地同潤会アパートの一室を借用してこれに移り住み、引続き海軍省に勤務して残務整理に当り、一方帰郷した被上告人の家族が城内村所在の被上告人所有家屋に居住し、被上告人所有の二反二畝一七歩の田(本件農地以外のもの)を耕作してきた事実、被上告人が昭和二〇年一一月三〇日予備役に編入され同日充員召集となり、越えて一月二五日充員召集解除となつて同年二月一七日城内村に帰郷し、爾来家族と共に右家屋に居住し、右二反二畝一七歩の田を耕作して今日に至つている事実、及び本件農地が昭和二〇年一一月二三日現在において小作地であり右二反二畝一七歩の田が同日現在、被上告人の自作地として買収から除外された事実は原判決の証拠により確定したところである。

しかして、原判決は右の事実関係を以て、被上告人の住所意思を実現する客観的事実の形成として十分であると判断し、被上告人は同年八月下旬頃本籍地の城内村に住所をもつに至つたものであり、従つて同年一一月二三日現在において被上告人の住所は右城内村に在つたとみとめるべきであると判示しているのである。如上、原判決の確定した事実関係からみれば、原判決が被上告人が同年一一月二三日現在において右城内村に、自作農創設特別措置法にいわゆる住所をもつていたものと解したのは相当であつて、論旨はこれを採用することはできない。

同第二点について。

自作農創設特別措置法に違反した買収計画に基づいて買収処分が行われたときは、所有農地を買収された者は、買収計画に対する不服申立の権利を失つた後も、買収処分取消の訴において、右買収計画の違法を攻撃することができることは当裁判所の判例とするところであり(昭和二四年(オ)第四二号、同二五年九月一五日第二小法廷判決)この理は本件におけるがごとく買収計画が同法三条に違反してなされた場合においても、異るところはないのであるから、論旨は採るを得ない。

よつて民訴四〇一条、九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

右は全裁判官一致の意見である。

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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